信頼性について

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信頼性について

投稿記事 by 辻本 誠(東京理科大学嘱託教授) » 2017年8月01日(火) 22:09

松原さんのトピック「要するに消せるのか、消せないのか」に近い話で申し訳ないが、古いファイルに未発表の面白い原稿が残っていたので、火災とは直接関係ないですが。
以下は2015年10月、横浜市都筑区のマンションの基礎杭のデータ改ざんから始まった一連の問題への意見です。
まぁ近い話が小生のHP http://www.nagomist.co.jp/tsujimoto_lab/ にも載ってますのでよろしく。

すべては「安全神話」から                
 先日来、建築物の基礎杭の問題で、テレビのワイドショーはもちきりである。
この問題は、不正を平気で重ねていた技術者なり企業があった点で、建築界の猛省すべき問題であるが、隠れている視点として、「技術に100%は無い」ということがある。固い地層まで杭を打つという行為そのものが、実際に何を保証しているのか。果たして設計で決められた杭の数を全部、マニュアルどおりに打てば、設計で考えた強度が保証されるのか、工学的には随分とあいまいさを含んでいることを誰も説明しない。
まず地盤のことは、本当は掘ってみないと分からない。ちょっと想像して欲しいが、近所の凸凹した場所(小川があったり、沼があったりした)に、洪水が起こって一面に土砂が積もり、水平な地層が形成された場合、事前にボーリングしていても、小さな沼や小川がサンプリングでは出てこないことが多い。地面の中が見えないのに、工学としては、敷地の幾つかの点をボーリングして固い地層までの深さを推定し、杭の長さを決めて施工が始まる。
杭を実際に打つと、まれに上述の理由で杭が固い地盤に達しないこともあるが、この時に①正直に打った杭の総数の10%が地盤に達しなくても、90%は達しているので、建物の耐震性、安定性には(多分)影響が出ない、と関係者を説得するか、②データを改ざんして、全部の杭が地盤に達したと扱うことで、その場を処理するか、ということになる。②の道をとっても、今回のようなことが起こるのは、それこそ万が一であって、虚偽の申告をしたことで罪に問われることは、時間軸でいえば自分がサラリーマンを続けている(責任がある)うちには露見しないレベルといえ、今回の杭問題が起こる。
結局のところ、技術屋側は注文主に対して「どうせ説明しても分からないだろう」と考え、注文主は技術者に実現不可能な「安全」を要求するところにこの問題の根幹があるわけだが、「何%の杭が地盤に達すればいいか」を正確に言うことが工学的に困難なため(同じ10%でも不具合な杭が均等にばらつくか、建物の同じ側に集中するかで結果が違う)、現場ではあいまいに取り扱われていると推察される。
この問題は、信頼性を幾らにすればいいかという、工学がずっと抱えている問題であり、別稿で取り上げることにするが、技術を受ける側と実際に施す側のすれ違いは、何も工学に限られていない。
 筆者は、猛烈な中島みゆきおタクであって、彼女の「病院童(わらし)」(彼女の父は産婦人科医)という曲には、患者の言葉として「きっと元どおりにしてね」「きっと昔に戻してね」というのがあり、明確ではないが医者の立場を代弁する第三者?の発言として「言うほうも言われるほうもなかなかせつない。病院は戦場だ、病院は外国だ」という歌詞が並んでいる。これを聞いて、本職の医者も切ないだろうと想像してしまうが、「この薬を飲んだ場合の来年までの生存率は50%、飲まなければ20%」などと、真面目な医師が本気で言える日が来るのだろうか。

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