火災科学研究所は火災科学研究部門を前身とし、火災研究に特化し1981年に組織された極めて特徴のある研究機関です。国内には、こうした火災科学の研究機関を有する大学は他にありません。同センターは、現在は国際火災科学研究科を中心として、以下に述べる理学部、工学部、理工学部の火災分野と一体となり、これまで火災安全に関する多くの優れた業績を上げてきました。
1962年に発足した工学部建築学科の創成期に尽力された故浜田稔教授は、関東大震災の罹災後、その甚大な被害を軽減させるために都市大火の研究をはじめ広く火災の研究に取り組んできました。その後、工学部建築学科に故森脇哲男名誉教授、沖塩荘一郎名誉教授が加わり、理学部化学科の故半田隆教授が火災科学の研究に本格的に着手し、その発展に大きく寄与し、森田昌宏教授や須川修身教授などの有力な火災研究者を育成しました。
一方、1967年に設置された理工学部建築学科に、火災研究で世界的に著名な故戸川喜久二教授、故川越邦雄教授が加わり、東京理科大学は、他の大学に類をみない火災研究・教育の場に発展し、多くの研究成果や人材を輩出してきました。21世紀COEプログラムを推進した若松孝旺名誉教授は、川越教授の後継者であり、両者は日本火災学会長を努め、また、国際火災安全科学学会の設立に尽力し、今日の両学会隆盛に大きく寄与しました。また、若松教授は、理工学部建築学科において現在のメンバーである大宮喜文教授、松山賢准教授、水野雅之准教授など多数の若手研究者を輩出し、将来に亘って火災科学分野の発展に大きく寄与する人材育成に取り組んできました。
そして、2003年に文部科学省が推進する21世紀COEプログラムに「先導的建築火災安全工学研究の推進拠点」が採択されたのを契機として、2004年4月に火災科学研究所が設置され、その初代センター長に若松教授が着任しました。また、2005 年3月に大規模な同センター実験棟が竣工され、さらに菅原進一教授、辻本誠教授の参入など、組織体制も充実しました。
5年間に亘る21世紀COEプログラム「先導的建築火災安全工学研究の推進拠点」の成果が高く評価され、2008年にはグローバルCOEプログラムに「先導的火災安全工学の東アジア教育研究拠点」が採択されました。それに伴い、若松教授に代わって菅原進一教授がセンター長に着任しました。これらの事業は、辻本センター長を中心に、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「専門知の共有に基づくアジアの火災安全情報拠点の形成~情報化社会における新しい火災安全のあり方」に引き継がれ、東京理科大学は火災科学の研究教育拠点として新たな発展の黎明期を迎えています。
年代 | 主な出来事(主な火災鑑定実施事例を含む) | 歴代の部門長 |
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1980 |
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半田 隆(1981~1985) 川越 邦雄(1985~1989) |
1990 |
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重倉 祐光(1989~1993) 石井 忠浩(1993~1997) |
2000 |
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若松 孝旺(1997~2003)
森田 昌宏(2003~2004)
若松 孝旺(2004~2008)
菅原 進一(2008~2013) |
2010 |
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辻本 誠(2013~2017)
松原 美之 |